PAGE TOP

レビュー作成裏話【美風慶伍の頭の中】 第4回 【 【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ー 】

 さて――
 かなり間が空いてしまったレビュー解説の『美風慶伍の頭の中』
 サボってたわけじゃないです。年末年始が挟まったのと、ちょっとあることを待ってたんです。
 それと、今回は2度めのSF――、それも壮大な世界観を背景に持ったドラマチックSFスペクタクル作品。
 壮大かつ悠久の広がりを持つ世界観の中で、SFならではの知的好奇心をくすぐるアクション性に満ちたドラマ。
 考えてみればハリウッド映画の大ヒット作って大抵はSFの範疇に属するものばかり。
 ならば、ハリウッド並みのスケールと奥行きを持ったSF長編を作ることは、なろう作家といえど不可能ではないはずです。
 そしてここに、その壮大かつ困難な大事業に果敢に立ち向かった偉大なる大馬鹿野郎が1人。

 その人の名は『タツマゲドン』
 作品の名は『【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ー』
 
 そしてそれはある1人のレビュワーを大いに悩ませることになるのです。
 それこそ胃が痛くなるくらいに。
 
 でははじめます。

【 美風慶伍の頭の中 】

第4回
作品名《 【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ー 》
作者 《 タツマゲドン 》

 さて――
 すでにご承知の人もおられるだろうが、私こと美風はある基準のもとにレビューの可/不可を判断している人間である。
 それは『レビューして読者の方々にどうしても知らしめておすすめしたい『面白さの核』があるか否か?』と言う点だ。
 
 逆を返せば、オススメするに足る『面白さ』や『楽しさ』や『付加価値』があれば、私は多少の欠点は気にせずに堂々とレビューをする。実際、文章能力や文体などに致命的な問題があっても、レビューした事例はいくつもある。
 逆に文章作法や基本的な物の書き方ができていても、レビューをしてまで読者に知らしめたいと思える様な『楽しみの核』『絶大な付加価値』が見いだせない作品はレビュー未到達としてダメ出しをしている。
 このダメ出しが場合によっては作家さんの心をへし折ってしまう事もあるので心苦しいのは事実なのだが、そう言うキツいスタンスも確固たる理由があってのことだというのは告知済みなので私は遠慮しない。そのスタンスはこれからも変わらない。なので私にレビュー依頼をする人は覚悟するように。
 
 さて――
 
 だがここで私を大いに悩ませるタイプの作品が往々にして登場する。
 それは――
 
【 レビューをしてまで読者に知らしめたい『面白さの核』を持っているが、同時に致命的な問題があるゆえにレビュー投下して作品の存在を知らしめる事がリスキーな作品 】

――である。

 つまりどういう事かというと――
 
【 レビュー可/不可のギリギリの線上となる微妙なボーダーライン作品 】

――があると言うことである。

 いや実際、ほんとに多いんだ!!
 
 プッシュポイントとデメリットポイントが同等に共存するが故に、どっちに判断した方がいいのか徹底的に悩ませられるのだ。少なくともレビュー依頼をしてきた人をがっかりさせたくない。しかし同時に、レビューを通じて作品を知らしめることで作品の致命的な欠点が明らかになり、レビューが効果を発揮しないばかりか、看板に偽りありとして作品にアンチがつく事すらありえるのである。
 
 こうなると読者を増やすのはもはや困難となる。
 そんな馬鹿な?! と思われるかもしれないが、読者は恐ろしくシビアで残酷なのだ。
 面白ければ読んでくれるし、つまらなければ二度と読んでくれない。
 たった一通のレビューが作品を爆発的に盛り上げることもあれば、永遠にとどめを刺してしまうこともある。だからこそレビューは怖いのである。
(蛇足ながら、だからこそ作品の本質を理解してくれるレビュワーを徹底的に探すことをオススメする)

 さて本作【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ーである。
 
 一読してSF、それもハリウッド映画ばりに壮大な世界観を持ったドラマチックSFスペクタクル作品だと言うのはすぐに判った。それも背景世界も、設定も、徹底してしっかりしている。アンダーソン少年を中心として展開される人間関係も、超越の特殊能力によるバトル描写も、SF作品として肝のハイテクノロジー描写も皆しっかりしている。それぞれの各パーツを見れば非の打ち所も無いくらいだ!
 
 そもそも――
 新規の未知なるハイテクノロジーを登場による変革した世界を舞台とした物語と言うのは、大ヒットアニメでは定番のスタイルなのだ。

 波動エンジンの技術供与により宇宙戦艦を完成させた『宇宙戦艦ヤマト』
 光子力エネルギーと超合金による戦闘ロボットの闘いを描いた『マジンガーZ』
 ミノフスキー粒子によるモビルスーツの開発の成功により、コロニー世界での宇宙戦争を描いた『機動戦士ガンダム』
 汎用人型決戦兵器の開発と戦闘運用をめぐる人間ドラマが交錯する『新世紀エヴァンゲリオン』
 
 どれもがド定番の作品ばかりだ。
 ハリウッド映画もそうだ。
 
 タイムマシンの発明をめぐる歴史ミステリーアクション『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
 汎銀河規模の宇宙文明の興亡を描いた『スターウォーズ』
 宇宙へと進出した遠未来の人類文明と異星人文明の接触と興亡を描いた『スタートレック』
 
 漫画から範をとるなら――
 
 人間の超能力開発をめぐる陰謀と騒乱を描いた『アキラ』
 サイボーグ技術とネットワーク技術が社会の細部にまで浸透した未来世界を描いた『攻殻機動隊』
 人型作業ロボットが社会の隅々にまで浸透した日本の未来絵図を描いた『機動警察パトレイバー』
 
 どれもが登場するテクノロジーがいかなるものなのか? を想像すると物語の全体像が速やかに浮かぶほどに明確に描かれているものばかりだ。
 そしてこの手の手法はファンタジー作品でも『その作品独自の論理法則の確立』と言う手段で、連綿と使われており、今後も絶えることのない超王道のスタイルといえるのだ。
 
(脱線だが、あの『けものフレンズ』もこの手法によるものと言えなくもない。生物を進化させるサンドスターの存在と、フレンズを捕食する上位者であるセルリアン、そしてその背景に存在する『人類滅亡』と言う事実――、そこから始まる物語であるけものフレンズは、テクノロジーによる世界変革をキーにした作品と言えるのだ)

 ■ ■ ■ ■ ■

 さて翻ってこの【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ーである。
 
 この作品には4つのキーワードが登場する。
 
 新素粒子「エネリオン」「インフォーミオン」
 新物質「ユニバーシウム」
 新兵器「トランセンド・マン」
 
 新粒子の登場と、それを利用した新物質の開発、さらにはそれらを応用した新兵器の存在、
 それらが影となり日向となり、世界をダイナミックに変革していく。
 物語の冒頭部では、その変革の歴史的工程が事細かに描かれていく。
 そして始まる〝世界の新たなる秩序〟
 物語は作品の主題である【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ーへと到達し、最初の章を終える。
 そこまでが本作の事実上の第1章である『Genesis』として描かれる。
 
 このGenesis編には、物語本来の主要登場人物は殆ど登場しない。
 なぜなら例えて言うのなら、
 
 機動戦士ガンダムにおける――

『ミノフスキー粒子の発見と開発の歴史』や
『モビルスーツ開発ヒストリー』あるいは
『スペースコロニーの建設と普及とコロニー国家の成立』

――などと言った物語本編の開始前のプレストーリー、プレヒストリーに相当する部分だからだ。

 商業作品の場合、漫画でもアニメでも映画でも、これらに相当する部分を描くことはまず無い。いわゆる【尺】の問題で入り切らないからだ。だから背景設定として匂わせるだけにとどめたり、関連雑誌などで紙面にて掲載したり、あるいは読者の想像の余地にゆだねる事になる。
 
 そして作品本編でリカバリー出来る範囲内に収めるために、作品未発表の部分が大量に発生することになるのだ。
 
 だが――
 
 この【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ーは違う。
 小説である事、アマチュア作品である事のメリットを最大限かつフルに活かし、徹底的に歴史ドラマの1ページとして、驚異的な密度と精度で、ある種変質的とも言えるクオリティで徹底的に書き込んで見せるのだ。恐るべき執念と誠意だ。
 その作者のSFストーリーテラーとしての誇りでありポリシーがGenesis編であり、最大のこだわりだろうと私は見ている。
 
 そうこの作品はGenesis編無くしては成立し得ないのだ。
 
 その後、物語はいよいよ作品の編へと突入する。
 アンダーソン少年を主人公とした物語は、Category 0 : Birthから始まり、いよいよドラマチックSFスペクタクルアクションとしての本領を発揮する事になるのだ!
 ココまで到達できればもう心配いらない。ハリウッド映画のさながらの緻密かつドラマチックなストーリーがジェットコースターの如く怒涛に流れ始まるのだ。

 超越した力を持つ者たちと謎の少年アンダーソン、そして彼を巡って対立し合う様々な存在や組織の存在――、作品の中に『異能バトル』『能力バトル』の要素を巧みにはらみつつ、絶妙な物語の流れへと読者を引き込んでいくのである。 
 
 と――
 
 ここまで文章を読んだそこのアナタ、気づいただろうか?
 
 本編であるCategory編が始まるまでのGenesis編――
 
 Genesis編が世界背景の周知徹底を主眼としているため、純粋にSF的な情景描写が続くセクションだ。しかしながら作品の主要登場人物はなかなか登場しない。このGenesis編を開いて目を通したときにしびれをきらせずに最後まで付き合えるかどうか? 初版の【THE TRANSCEND-MEN】の構成では、多くの読者がここで心を折られてしまうのでは? と思えるくらいに読み続けたい! と思える引き込みに乏しいのである

 事実私も一度は断念しかけた。いつ本編が始まるのだろう? と困惑してしまったのだ。
 
 だがレビュワーとして、本編を読まずにレビューの可否を決める事などできない。
 この作品の面白さの核はなんなのか? おすすめできる事の本質は何なのか? それをつかむためにはさらに奥へと読まねばならないと確信を抱いていた。そして、Category編へと到達――
 
 そして思った。
 
【 この作品はCategory編からが超絶的に面白い!! 】

 SFと言うくくりが勿体無いくらいのエンタメ性とドラマチック性に溢れていたのである。
 特に主人公のアンダーソン少年が自らの居場所と決めるチームとの関わり合いの描写は胸に迫る物があり、とくにトレバーなる老人物とアンダーソン少年との師弟関係の様なかかわり合いは見事と言わざるをえないほどのクオリティなのである。

(スターウォーズのオビワンとルークの関係性を思い出してもらいたい。あれに匹敵する面白さなのだ。あれは初期3部作のスターウォーズの最重要部分である)
 
 そこまで読み込んで気づいた事。
 
【 Category編の面白さに到達するまでに、Genesis編を読みこなし終えられるか? 】

 本作品の問題はこれなのである。そこで徹底的に悩んでしまった。

 Genesis編は後のCategory編を楽しむための重要エッセンスであり、楽しめる予備知識として必要な部分だ。だがそのGenesis編をSF耐性の薄いなろう読者にも楽しんでもらえるようにレビューにて説明できるだろうか? 果たしてどうレビューすれば?
 
 タツマゲドン氏に「Genesisをなんとかしてよ」とのたもうてレビュー不可とするのは簡単である。だがそれでは作品の可能性を引き出すためのダメ出しにはならない。
 
「こうしたらもっと読者にアピールしやすくなる! そして面白さを引き出せるはず!」

――といえるまでにレビューとダメ出しを両面で出さねばならないのである。
  
 ならばどうすればいいのか?
 ここで私は2つの方策を取ることにした。
 
①Genesis編の価値を徹底的に後押ししてブラッシュアップするレビューを書く。同時に、Genesisの後に超絶的に面白い本編が待っている事を読者に突きつける。

 まずレビューにて、Genesis編の価値を補完できるようなレビューを作成し、さらにGenesisの後のCategory編の面白さをコレでもかとレビューにてアピールする。この方針でレビュー文を作成する。
 そしてもう一つ――
 
②作品の構成が、Genesis編とCategory編とで離断しており、読者がGenesis編で折れてしまう可能性がある事をダメ出しする。さらに構成を一工夫して、Genesis編その物を、Category編の物語の流れへと取り込み、2つを地続きにする方策を考えてほしいと指摘する。

――これを感想でタツマゲドン氏に伝えたのだ。


 つまりレビューにて本作品の面白さの有りかをアピールして、Genesis編とCategory編のつながりを補完。さらに、感想でのダメ出しを通じて、この点の問題点を指摘。さらなる改善を促すと言う方針で挑んだのである。
 
 そしてコレを前提としたレビュー文が以下である


【壮烈なるSF抒情詩世界観。ハリウッド映画に殴り込める程のストーリーパワーを味わいつくせ!】

★SFを基盤とした物語創造において、新エネルギー新素材新概念、それらを物語のスタート地点とした作品はある意味王道だ。具体名は挙げないが我々はそれらの作品を知っている。だが多くは時間的尺と言う制限に阻まれ細かな点は描かれない。見る者の想像の余地に委ねられる。だがこの作品は違う。根本が異なるのだ
★新素粒子、新物質、新兵器――、王道のSFキーワードを種として作者はまず丹念かつ濃密に世界の根幹となる背景世界を神の視座で描きぬく
★次いでその世界に生きる者の過酷な現実を戦いの最前線の姿から映し出す★作者に対して敬服するのは〝小説〟と言う媒体で許される限界へと、意味変質的とも言える丁寧さで紙面に刻みつける姿勢だ。その執念に敬服である
★だが物語は一人の少年の出現をもってSF的闘争世界を生きるヒーローの出現を予感させてくれる。アンダーソンとソレを囲む人間性あふれる仲間がそれだ。これもSF娯楽大作の王道である


 そしてもう一つ――
 私がなぜ、このレビュー解説記事【美風慶伍の頭の中】の第4回をこの時期まで伸ばしたのか? と言う点についてだが、それにはある理由があるのだ。

【タツマゲドン氏は私のダメ出しに真っ向からしっかりと答えてくれたのだ!】

 敬服である。作者がレビュワーの無茶なダメ出しから逃げずに真っ向から立ち向かってくれたのだ。ならばそれをしっかりと受け止め評価する解説記事を書くのが妥当なはずだ。

 Genesisが丹念に改稿され、冒頭部に新たにfirst編が添えられているのが分かるだろうか?

 私が指摘したGenesis編とCategory編の連続性・接続性の問題をしっかりと認識して手を加えてくれたのである。
 
これこそが【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ー の完全版である。
 
 本作をあなたの目でしっかりと見て欲しい。
 超絶に面白いSFはここにある

さて次回は――

能登川ツグルさんの名作
『少女は悪魔に死を願う』
――を解説する。
これもまた私のダメ出しを乗り越えた努力作である。

ζ
■D:美風



スポンサーサイト

レビュー作成裏話【美風慶伍の頭の中】 第3回 【 左団扇奇譚 】

はい、3回目となる『美風慶伍の頭の中』

今回はコンビキャラです。
キャラたち物の中でも一度は書いてみたいと皆さん思ってらっしゃるんじゃないでしょうか?
商業作品でもコンビキャラで人気を博しているのは決して少なくありません。
ですがいざ書いてみようと思うと・・・
今回はそんな『コンビキャラ、キャラ立ち』物の作品のレビューについてです


でははじめます。
【 美風慶伍の頭の中 】

第3回
作品名 【 左団扇奇譚 】
作者 【 音叉 】


 コンビ物、アニメでも漫画でも映画でも王道を成すジャンルである。
 何か一つ出してみろ! と言われたら誰でもすぐに出せるだろう。
 
 仮面ライダーだったら仮面ライダーWの左翔太郎とフィリップ、
 ロボットヒーローだったら宇宙鉄人キョーダインのスカイゼル・グランゼル
 
 洋画の警察物だったら、48時間のジャック・ケイツとレジー・ハモンド
 ハリウッド映画ならMIBのKとJも忘れちゃいけない。
 
 テレビドラマからも色々
 あぶない刑事でのタカとユージ
 噂の刑事のトミーとマツ
 TRICKからは山田奈緒子と上田次郎
 SPECからは当麻 紗綾と瀬文 焚流

(あ、相棒はここでは認めない、あまりにパートナーを変えすぎでしょう!)
 
 古典小説なら推理作品からホームズとワトソンも有るだろう
 
 漫画では
 ちょっとマイナーだがNERVOUSBREAKDOWNの安藤一意と三輪青午
 トライガンからはヴァッシュ・ザ・スタンピード&ニコラス・D・ウルフウッド
 寄生獣からは新一とミギーもか
 バクマンから、サイコーとシュージン
 鋼の錬金術師からは、エドとアル
 うしおととらも入れとこう
 キャプテンハーロックとトチローの古典コンビも入れておく。

 アニメからも
 ご存知、ルパンと次元、
 TIGER & BUNNYからは虎徹とバーナビー
 初代プリキュアのなぎさとほのか
 カウボーイビバップからはスパイクとジェット
 
 やってるとキリがないのでこの辺で(笑)
 
 だが、これらのキャラクターたちの名前を見ただけで、その作品の内容と世界観がリアルに脳裏に描かれるはずだ。その二人がコンビを組んでいる。ただそれだけでも物語世界の看板になる。それだけのキャラの作り込みが要求されるのだ!
 
 よく見て欲しい。上記に並べたキャラたちを。
 その殆どが〝過去〟において何をしていたか? と言う〝歴史〟がしっかりと書かれているキャラばかりなのだ。二人の人物が存在し、そして必然性があり出会い、絆を結び、一つの目的へと向けて行動する。そして困難を乗り越え、大きな事件を解決する。そのコンビが二人揃っての行動そのものが壮大なドラマとして結実しているのがコンビ物のスタイルなのである。

(ちなみにこれは私基準だが、たんに仮面ライダーの1号2号の様に単に二人揃ってると言うだけではコンビと呼ばない理由がここにある。常に二人揃ってこそのコンビなのである。ドラマの相棒を除外したのもこれが理由。あれだけパートナーを使い捨てにしてたらもはや相棒じゃなくて右京個人のドラマである。最近はそれが視聴者にもバレてきてるから人気が下落しているのである)
 
 さて、今回のレビュー対象の【左団扇奇譚】である。
 
 その表紙イラストを見た瞬間に思った。
 
『あ、コンビキャラで勝負をかけてる』

 表紙イラストの立ち位置だけでそのキャラクターの関係性が匂ってくるのだ。これをコンビキャラ物と呼ばずにどう呼ぶだろうか? 期待して表紙をめくって中を読み始めればもうそこはめくるめく夢の世界である。
 
 登場するコンビキャラは以下の二人。
 
 洋装と黒猫が印象的な雨下石亜緒 
 和服と日本刀が印象的な渚蘭丸
 
 イラスト抜きでも文字だけでもその印象的なまでのコントラストがくっきりと浮かんでくる。
 青と黒それがこの二人のイメージカラーだ。
 
 さらに、その性格、立ち振舞、嗜好、関係性、それらが冒頭部の短いスパンで分かりやすく伝わってくる。
 そして、そのキャラクター完成度が半端ないくらいに高いということも。
 
 ならばレビューの方向性は決まった。コンビキャラ推しで徹底的に行くしか無い。コンビキャラとはなんぞや? と言うことを解説して、この左団扇奇譚の亜緒と蘭丸がどれだけコンビキャラとして完成度が高いかを徹底的にアピールするしか無いだろう。
 
 そうなると問題になるのは『コンビキャラ』とはなんぞや?
 
――と言うことである。
 さてではそれについて以下に列記する。コンビキャラの要件である。

 
1:目的として同じ方向を向いている

 当然である。行動目的を同じとせずバラバラの方向を向いているものをコンビは言わない。
 コンビ物が事件解決を旨とした、刑事物や探偵物、あるいは壮大な目的を持った冒険者やヒーロー物が多いのにはこの辺に理由がある。
 
〝目的として同じ方向を向いている〟これを象徴するキャラがバクマンのサイコーとシュージンである。作画担当のサイコー、原作担当のシュージン。彼らが互いに足りない部分を補い合いながら、漫画家デビュー、そして連載獲得と言う共通の目的へ向けて邁進する姿そのものがバクマンの物語の〝核〟となっている。

2:華麗なコントラストをなす対象的な個性

 キャラの個性が異なって居なければならないのは当然であるが、それ以上に〝対象的なコントラスト〟を描けるほどに際立っている必要がある。
 
 仮面ライダーWの翔太郎とフィリップを見れば一目だ。
 行動的であり一人の探偵として事件現場や被害者の下へと積極的に関わろうとする翔太郎に対して、基本引きこもりであり自分が関心を持ったものにしか関わろうとしない受動的なフィリップと言う正反対のキャラがうまい具合に物語の中で動いているのが解る。
 だが、それぞれの個性を細かに見れば、案外にナイーブで揺れやすく感傷的な翔太郎に対して、理性的であるが故に動じることがなく芯がぶれないフィリップと言う性格面でのコントラストもはっきりしている。
 そのコントラストぶりが物語の中で翔太郎とフィリップを交互に陰と陽にし、物語をよりダイナミックなものに仕上げているのである。
 自分が家族に関する記憶を持っていない事からパニックに陥るフィリップに対して、繊細で人の心に寄り添える翔太郎がフィリップの気持ちを癒やしコンビとしての絆を再確認するエピソードや、自らの能力がフィリップと差がついてしまったが故にコンビの危機を迎えた時に、フィリップのブレない知性派としての立ち位置が翔太郎を奮起させるきっかけになるエピソードなど、二人の絆が物語を盛り上げるエピソードには枚挙にいとまがないくらいである。
 Wがヒットしたのは当たり前といえる。
 
 
3:コンビでワンセットとなる造形美

 いわゆるビジュアリティだ。
 外見の見かけが曖昧で区別がつかないようでは意味がない。
 また2の互いの個性のコントラストがヴィジュアルに反映されるくらいに現れている必要がある。
 
 例えば鋼の錬金術師のエドとアル、
 低身長でつり目でフットワークの軽さが現れたまとまりの良いデザインのエドに対して、ずんぐりむっくりとした重厚な鎧その物の外見のアル。そのコントラストは二人の兄弟の個性にシンクロしている。積極的かつ短気で衝動的な兄に対して、温和で理知的で何事にも慎重な弟、そしてその二人が禁忌により失った〝手足〟と〝全身〟と言うショッキングなビジュアルが反映される事により、二人の兄弟の過去に対する深みと説得力がより強く描かれる。
 
 ルパンと次元もそう。
 二人ともスーツ姿だが、原色の極彩色が多いルパンに対して、黒やグレーのモノトーンが多い次元。色合いだけでも明確な違いがありそこに二人の性格的な違いが明確に現れているのが解る。さらに次元は常に愛用の帽子をかぶっておりそこに〝自分〟と言うものをあまり表に出さない次元のパーソナリティを明確に表し、逆に表情豊かに素顔(?)で行動するルパンとの違いを現している。
 
 これがプリキュアのほのかとなぎさになるとさらにわかりやすい。
 二人とも学生であり制服姿で居ることも多いためビジュアル的な違いが出にくいように思えるが、ショートカットで茶髪でつり目の渚に対して、黒のロングヘアの穏やかな目線のほのか、そして目元の細かなデザインの違いが、二人の個性と性格の違いを明確にシンボリックしているのは興味深い。
 

4:どちらも尖った形で有能

 当然である。
 コンビを組む以上、片側だけが有能でもう片方が足手まといではコンビとはならないのである。
 
 NERVOUSBREAKDOWNの安藤一意と三輪青午
 鋭い推理能力があり知性派の権化のような安藤だが、その実、救急箱が手放せないくらいに身体が弱い。ちょっと走っただけで倒れるくらいである。洗面器が愛用アイテムで常に嘔吐しているのだ。それに対して三輪は頭脳まで筋肉で知性はアウトだが、肉体に関しては誰にも負けない。行動力、機動力、戦闘力、どれをとってもケタ違い。安藤が動けない状況でも安藤を背中に抱えて犯人と戦えるくらいである。
 頭脳と肉体、あまりに明確なくらいに対象的な形で、その能力が発揮されている。
 
 寄生獣の新一とミギー――
 彼らの場合はやや特殊だ。
 肉体としての本体である新一はまるっきり普通の高校生男子である。それに対してミギーは寄生生物であり、他の凶悪な寄生生物と戦うにはミギーの身体能力に頼るしか無い。
 だがミギーは所詮寄生生物であり人間社会のそれに対してはデリカシーが無くその正体が露見すれば窮地に陥るのは明白である。
 これに対して、はじめは平凡な市民だった新一が、寄生生物との闘いを乗り越えるたびに一歩一歩成長し、時には肉体面でも変化を起こし、単独でも戦えるほどに能力が強化されていく。
 またミギーははじめこそ不気味な生物でしか無かったのが、その理解力と知性力故に人間社会に対して理解を深め、宿主である新一を守るためにはどのような力が必要なのか? そして新一をどう守っていけば良いのか? を懇切丁寧に気遣うようにまでなる。さらには自分自身が弱体化する危険を押してまで新一を救おうとするのである。
 二人の能力の変化と成長が、物語にまで反映されているケースである。
 
さて、翻って左団扇奇譚の二人はどうだろうか?


1:目的として同じ方向を向いている

 これはわかりやすい。
 魑魅魍魎が当たり前に存在する街で妖怪退治の会社を共同で営んでいる。そして当面の目的は金、それも生活費である。(ただし仕事には困窮している(笑))
 
 
2:華麗なコントラストをなす対象的な個性


 作中冒頭にこんなシーンが有る。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーー
 突然来客を告げる呼び鈴が鳴る。

「客か!」

 亜緒の期待と願望が声になる。

「借金取りかもしれないから迂闊に出るな!」

 一方で蘭丸は慎重である。
 呼び鈴一つ取っても二人の受け取り方は異なる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー

 この一つをとっても、楽観的であっけらかんとした亜緒に対して、何事にも慎重で警戒を怠らない蘭丸の性格が如実に現れている。ただ物語が進む連れてただそれだけではないと言うことも明らかになっていく。(ただそれについてはここでは書かない。ネタバレになるので)
  

3:コンビでワンセットとなる造形美

 これも明確だ。
 洋装で古式ゆかしいドレスコードに従ったワイシャツにネクタイにベスト姿の亜緒と、
 和装の着流しの着物姿で長髪の蘭丸と、一目で違いが解る。
 
 さらには二人のキャラクターの個性を象徴するマストアイテムも明確な違いが有る。
 
 亜緒が不可思議な黒猫を常に抱いているのに対して、
 蘭丸がその手に常に携えているのは剣呑ささえ感じられる日本刀である。
 
 映像美としてもわかりやすいのである。
 

4:どちらも尖った形で有能

 蘭丸はわかりやすい。その日本刀から剣術(特に居合抜刀術)に対して秀でているのは明確である。
 それに対して亜緒は、妖怪にまつわる事案に対しての造詣の深さを持ち、妖獣鵺を使役する陰陽師である。妖怪退治に対しては、蘭丸が最前線で剣を振るい、亜緒が参謀として能力を発揮することとなる。 
 この点においてもコンビネーションの高さは明白である。
 
 そして当然ながら、これらの4つのファクターの他に一つの〝人〟として外見、癖、性格、欠点、口調、所作、嗜好、能力――などを細かに作り上げ、キャラクターとして成立させることが求められるのである。
 
 しかしながら、コンビという形での二人のキャラクターの造形――それが完璧に出来上がったとしてそこで終わりではない。
 ここまでの人物としての要素はお話の中での『横糸』に相当するものである。この横糸に加えて必要となるのが『縦糸』となる〝過去〟なのである。

 つまり――『現在に至るまでに何があったのか?』
 これを書かねば『なぜコンビが成立したのか?』と言う根源的なものが成立し得ないのである。
 
 先に上げた作品例の中のから一例をあげよう。
 
 宇宙鉄人キョーダインだが、彼らがメカの身の上で兄弟としてコンビを組んでいるのには訳が有る。
 侵略者ダダ星人にサンプルとして、父ともども兄葉山譲治と弟葉山竜治はダダ星にアブダクトされたのだが、実は彼らには弟がもう一人居た。葉山健二。地球で孤独に暮らすことになってしまった弟の身を案じていた。
 だがこれと共に、彼らをアブダクトしたダダ星人には、資源豊富で生物生存可能な有益な惑星である地球を侵略する意図があった事を知る。優秀なロボット学者であった葉山兄弟の父は、ダダ星の宇宙文明を取り込みつつ兄譲治と弟竜治の人格と記憶とコピーしたアバターロボット、サイバロイドを作り上げる。そして密かに地球へと送り出すのだが――
 
 このサイバロイドには二人の兄の〝人格〟と〝記憶〟が宿っている。と言うのがミソ。
 単に正義の味方スーパーロボットとして地球防衛をするのではなく、3人兄弟の2人の兄としての過去が宿ることで、二人の兄の身代わりロボットとして、末の弟を家族として守るという〝理由〟が加わることとなる。
 これが二体のロボットが、二人の兄としてコンビを組んで侵略者と戦う最大の理由となるのである。
 
 さらに鋼の錬金術師からは、エドワード・エルリックとアルフォンス・エルリック
 これは説明不要なくらいに有名である。
 幼くして錬金術に類まれな才能を発揮していたエルリック兄弟
 全てはやさしい母さんが喜んでくれるから、ただそれだけのため。だが、彼らの父であるホーエンハイムが姿を消し、残された母が流行病で命を落とす。孤独になってしまった兄弟は錬金術において禁忌とされている『人体錬成』で失われた母を取り戻そうとする。だが当然ながらこれに失敗、禁忌の代償として兄エドは左足を失い、弟アルは全身を失うことになる。これに対してエドは自らの右腕を代償としてアルの魂のみを取り戻す。
 そして、右手と左足を失った兄と、全身を失い鎧にその魂を定着させた弟、二人は互いの身体をもとに戻すことを願い、そしてその手段として『国家の犬』と揶揄される国家錬金術師への道を志す。それ以後の苦難に満ちた彼らの旅路は私よりも皆が詳しいだろう。
 
 
 ならば左団扇奇譚の二人ならどうだろうか?
 実はまだそこまで本編の中で詳らかにはされてない。
 亜緒の実家である雨下石家は妖かし調伏の大家であり、亜緒の実父はその筋では誰もが恐れる最凶の人物。亜緒は何ゆえか実家から離れ、蘭丸とともに暮らしている。
 対する蘭丸の過去となると更に謎である。所有している妖刀に絡み因果を背負っているのは確かであり『闇子』なる不可思議な人物の存在と、彼自身が己に課している〝生きている人を斬らない〟と言う誓約にが有るということだ。
 ここから読み取れるのは、亜緒の〝しがらみ〟であり、蘭丸の〝因果〟である。
 それが物語が進むに連れて紐解かれていくかのように少しづつ明かされていく。そして、これこそが左団扇奇譚の〝縦糸〟である。
 
 この縦糸と横糸が交差することで、そこに壮大なドラマが生まれる。
 そして、そのドラマは全て、雨下石亜緒と渚蘭丸と言う二人のヒーローを輝かせる、ただそれだけのために費やされるのだ。
 否、そもそもコンビ物と言うのは、コンビを組む二人をいかに物語世界の中で輝かせるか? と言うことに本来の主眼がありそこを成立させずにコンビ物のファクターは満たされないのである。
 その点においては、左団扇奇譚は見事に成功しているといえるだろう。
 
 そしてそれらの論理について記したのが以下のレビューである。

【最高レベルのキャラクター造形が光る! 和風テイスト妖かし始末人奇譚!】

★対象的な個性の男がコンビをなし、トラブルや事件を解決する。いわゆる『キャラ立ち』物としては王道と言えるスタイルだ。古典作品から名を出すなら〝ルパンと次元〟〝ホームズとワトソン〟〝スパイクとジェット〟――彼らなら名前を出すだけでその人物としての全てが克明に想起されるだろう。『名前だけでキャラクターの足跡になる』それほどの作り込みが要求されるのだ。この手のジャンルには。
★だがこのキャラクター造詣がコンビキャラの場合、恐ろしく難しいのだ!
★なぜなら〝目的として同じ方向を向いている〟〝なおかつ華麗なコントラストをなす対象的な個性〟〝コンビでワンセットとなる造形美〟〝どちらも尖った形で有能〟――などなど要求されるファクターは多岐に渡る。これになおかつ一つの〝人〟として外見、癖、性格、欠点、口調、所作、嗜好、能力、経歴――、あらゆるものを息をするように自然に臭ってくるまで作り込まねば、そのキャラクターは生きてこない。これを二人分きっちり。
★はっきり言おう。やろうとしてできることじゃない。
★さて本作。
★万年金欠のコンビ、雨下石亜緒(しずくいし あお)と渚蘭丸(みぎわ らんまる)かれらが営む妖かし始末屋『左団扇』で物語ははじまる。万年貧乏のエキスパート。王道である。そこに持ち込まれる〝事件〟それを2人が鮮やかに解決すると言う形が物語の〝横糸〟の基本フレームだ。
★それに対して〝縦糸〟として亜緒と蘭丸の過去が絡んでくる。亜緒の〝しがらみ〟蘭丸の〝因果〟物語が進む度に2人の過去が紐解かれて現在へとたどり着く。
★しかし、それらの縦糸横糸の織りなす舞台装置は全て、亜緒と蘭丸と言う2人の主人公を輝かせる最高の演出として費やされる。作者がどれだけこの2人に愛情を注ぎ込んで育てたかが伝わる。感服するくらいである。恐るべき母性だ。おかあさん! 貴方の2人の息子は立派に育ってますよ!
★華麗なる妖かし始末人の生き様、とくとご堪能あれ!


 以上だ。
 それにしても表紙のイラストは見事だ。
 コンビキャラ物としてのビジュアルイメージを焼き付けるには最高の手段である。
 だが本文がイラストに負けないだけのボリュームとクオリティを有している。
 これからも期待できる作品である。
 
 
 さて、次回は――
 
 堂々たるSF抒情詩スペクタクル作品
 
 タツマゲドンさんの『【THE TRANSCEND-MEN】 -超越せし者達-』
 
――を予定している。
 
 タツさん。後日ご挨拶にまいります。
 
 でわでわ!!
 
 
 ζ
 ■D:美風
 

レビュー作成裏話【美風慶伍の頭の中】 第2回 【 本日ハ所ニョリ磁気嵐、重油雨ノチ音波風 】

はい第2回目である。
美風慶伍の頭の中。
そして第2回目の題材はSF作品である。

SF.SF,SF………

この2文字を見ただけで、コンバットを目撃したGの如く散っていく読者がどれだけいるだろうか?
もったいない。
とてつもなくもったいない話である。
だからこそ考えた――

バリSFのこれ、どーーーーーーやったら、色んな人に読んでもらえるんだろ?
しかしソレは本レビュー史上最大の難関峰への登頂を目指すアルピニストのごときであった。

でははじめます。
【 美風慶伍の頭の中 】

第2回
作品名 【 本日ハ所ニョリ磁気嵐、重油雨ノチ音波風 】
作者 【 庵乃雲 】

 SF好きの人、SFを心から愛する人、皆様には大変申し訳無いが、
 現在の小説家になろうではSFは良い印象を得られているとは到底おもえない。
 内容を読まずにSFと言う2文字だけで表紙すらめくらない人間があまりに多いからだ。

 SF嫌悪症候群――

 これを何とか克服しなければSF作品の有効なレビューは書けない。
 ソレは特攻装警グラウザーと言うSFを書いている私であるからこそ痛感するのだ。

 さて――
 本作『本日ハ所ニョリ磁気嵐、重油雨ノチ音波風』は、想像を絶する奇想天外が気象事情が跋扈する未来?の地球を舞台とし、無限長の巨大レールの上を絶え間なく前進する『格子構造体』と呼ばれる20キロm四方の立方体の内部にまさにシロアリの如くにしぶとくたくましく生存している人類の生きるさまを描いたヒューマンドラマSFである。

 ………はい、ここまで5行でこのページ閉じようとした人。何人居る?

 ひー、ふー、みー……‥
 あ、はい。了解。うん(;一_一)

 そうなのだ。
 『説明が難しそう

難しい、ではなく〝難しそう〟

 こう感じた段階でその作品から離れる人は壮絶に多いのだ!
 なぜなら……

【なろうにはSFに特有の論理考証や理系の知識概念に不慣れな未成年読者があまりに多いからだ!】

 ましてやこれだけ異世界系が跋扈している現在ならなおさらのはずだ。
 今回のこの本日ハ所ニョリ磁気嵐、重油雨ノチ音波風【略して以下『ニョリ』】のレビューは当然としてSF臭をいかに減殺しつつ、物語の面白さを凝縮して読者へと届けるか? と言うことに徹底して頭を悩ませる事になる。
 だが――
 上記の水色の文字文、どう見ても「SF解説」だよね。うん……
 はっきり言おう。【レビュワー泣かせ】である。つまりどういう事かというと――

『説明文章』ではレビュー出来ないのだ!! llllll(-ω-;)llllll

 どーしろって言うの……
 わし田舎に帰っていいですか? 
 ガッデム。ここで断念したらレビュワーの名折れである。ましてや私を信用して作品を読んでくれとリツイートしてくれた庵乃雲さんに対して失礼である。ならば――

『この作品の最大の面白いところを徹底的に調べ上げよう』

――そう思った次第だ。そうするためには『全ページを徹底的に読み込まねばならない。
 多分、査読するのに一番時間がかかったのは間違いなくこの作品だ。

 そして丸半日をかけて査読した結果、結論がコレだった。

【 イサカ可愛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!! 】

――マジで。

 それだけではない。登場するキャラクターたち一人一人の個性が際立っているのみならず、この奇想天外世界の中の唯一の都市である『コルニコグ市』に住んでいる全ての住人たちが生命力に溢れまさに『生きている』のである。
 そのライブ感と生命感がとても無く輝いているのだ!!

 そっか――、そう言う事か。
 ならば、それを読者へと伝えるのみだ。そうするにはどうすればいいか?
 頭をひねった結果出た答えは。

『俺の言葉で語るから悪い意味でSF臭が残る。ならば【イサカ自身に自らの言葉で説明してもらう】しか無いだろう』

――と言う結論に足したのだ。それで考えたのが『2次創作パターン』だ。
 イサカとニコニコが、まだコルニコグに来たことのない読者に対して、観光案内を伝えるというスタイルを思いついたのだ。そして伝えたい面白さの要点を箇条書きにすることにした。極力イサカの口調になるようにして。
(イサカは朴訥でありぶっきらぼう、でめんどくさがり屋である。でも有能)

 そこで抜き出したのが以下の特徴だった。

①本都市にオイてはあたし、イサカとニコニコに注目すべし

 この物語のキーは主人公である【イサカとニコニコ】であり、まずはそこを追うところから物語を読むことを勧めている。

②都市の土台である格子構造体については、そういうものだと諦めるべし

 都市の土台である格子構造体はSF概念の核の部分、ここは〝そう言うものだ〟とスルーしてくれと読者に伝えている。

③仕事終わりにアタシの定時放送はきけ

 夕方19時にはイサカの気象案内のライブトークがある。ただ半分以上はイサカのおしゃべりでバラエティと化している。コルニコグの市民はイサカの定時放送でその日の終わりを知ると言う。

④重力地震に注意(注意してもどうにもなんない)

 突発的に発生する空間振動事故。ただし予見も対策もできない。

⑤お土産はシジュンク横丁で

 コルニコグ最大の繁華街。食い道楽から遊びまでなんでもある

⑥お泊りはアリマ湯屋で(ナノに手を出したらはったおす)
 
 イサカが足繁く通う湯屋、要は泊まり付きのお風呂屋だが湯女もいる。しかも無駄に和風テイスト。ナノはアリマ湯屋の湯女の一人。

⑦機械蟲の串焼きが絶品

 作中に度々出てくる珍味。イサカの好物。実際に食べてみたい。

⑧警備部門マジ頼りになる

 本作の最大の災害にして〝敵〟である特殊災害に真っ向から立ち向かうのがこの〝警備部門〟の強者たちである。

⑨特殊災害は諦めるものではなくみんなで立ち向かうもの

 コルニコグ市民の共通した信念で、どうにもならないではなく、どうしたら生き残れるか? 市民全員で力を集結して立ち向かうのが彼らの生き様なのである。

⑩オヴォン・マツリをみんなで楽しもう

 なにやら文化と名称が間違って伝わったらしい。
 だが〝生きている〟と言う事を目一杯に確かめ楽しむためにコルニコグでは最大の娯楽として楽しまれている。

⑪キョクトウクオリティ

 作中に度々登場するのが『極東開発』と言う技術開発企業だ。そのレベルの高さと仕事の速さは天下一品。それを評して出るのがこの単語。

 そして、コルニコグに実際に行ってみたいというワシのおもいを書き、作品に満ち溢れている『あふれるばかりの生命力』について解説文を加え書いたのがコレである。


【格子構造体都市:ヘルニコグ観光案内】 著、イサカとニコニコ

①本都市にオイてはあたし、イサカとニコニコに注目すべし
②都市の土台である格子構造体については、そういうものだと諦めるべし
③仕事終わりにアタシの定時放送はきけ
④重力地震に注意(注意してもどうにもなんない)
⑤お土産はシジュンク横丁で
⑥お泊りはアリマ湯屋で(ナノに手を出したらはったおす)
⑦機械蟲の串焼きが絶品
⑧警備部門マジ頼りになる
⑨特殊災害は諦めるものではなくみんなで立ち向かうもの
⑩オヴォン・マツリをみんなで楽しもう
⑪キョクトウクオリティ

★楽しかったですヘルニコグ!え?まだ行ってない?それはもったいない貴方も行きましょうよ!
★真面目な話、絶望的な錆びついた奇想天外世界。都市構造もさることながら、それに襲い来る想像を絶する特殊災害。絶望感すら漂うはずなのに、ヘルニコグに生きる人たちの眩しいばかりの生命力が光る一品。命の讃歌が描かれた名作!


 以上だ。
 書き終えたあとはルパン3世じゃないが『今はこれが精一杯』と言いたい気分だった。
 庵乃雲さんには歓んでもらえたので凄い嬉しかった。

 さて今回はこれまで
 次回は音叉さんの左団扇奇譚を予定している。

 あー、あの連中また腹すかしてるんだろうか?

 では
 ばいなら。

ζ
■D:美風

 
 

レビュー作成裏話【美風慶伍の頭の中】 第1回 【 泉の聖女 】

今回、60件近いレビューを大量に投下したわけだが、特に後半になって透過したレビューの中から、大幅にランキングアップを果した作品がいくつか出ている。
またPVも瞬間的にかなり上がっているのも散見される。

そういう状況下で、幾つかの方たちから――

【どうやってそのレビューを作ったのか】

――知りたいと言う声を頂いた。

今回、それを記事にしようと思う。
題して――
【 美風慶伍の頭の中 】
――はじまります。

第1回

作品名 【 泉の聖女 】
作者 【 小花衣 麻吏 】

 現在の小説家になろうにおいて、名実ともに最大勢力と言えるのが俗に【転生系】とよばれるジャンルである。俗になろう系とも称される事のあるこのジャンル。コレほどまでに多くの人に愛され、また蛇蝎のごとく嫌われるジャンルもそうそうないだろう。

 だが、実際にその転生系と呼ばれるジャンルを幾つか読みこなす内に細かな違いがある事に気付いた。

1:転生系独自のストーリー構造が有る。

 これはいくつかのレビューでも書いたがつまりは――

【現世:こちら側】 ⇔ 【異世界:向こう側】

――と言う世界構造である。

 これをどう扱うかでこまかなジャンル分けができる。
(注:下記に上げるジャンル分けは美風の考えたものです。公式のものじゃないです)

 1:開拓系

 つまり唐突にこちら側から向こう側へ飛び出してしまうスタイル。
 このケースの場合元の世界の事は殆ど描かれなかったり、サラリと流されたりする。
 つまりは向こう側で何をするか? どう言う行動をとってどう言う結果を出すのか? そして自分の運命をどう切り開くか? と言う事を描くのに大半が費やされる。もちろん、向こう側に来る際に【お得な力】がついてくることがある。そしてこのお得な力でさらにやりたいようにやるのが【チート系】となる。明るくライトなタッチの物が多く爽快感を重視した話運びとなる。

 レビュー例としては以下の作品


――などが該当する。


2:宿命系

 向こう側とこちら側の事情が絡み合い、主人公がその人である理由と必然性があるのがこのタイプ。必然性と理由は様々で、現世での事情や人間関係が、異世界での事情にそのまま影響をおよぼす。
 考えられるパターンは色々ある。
 
 現世での主人公を含む組織や人間たちが異世界へとそっくり様々な場所に移動して影響をあたえているケース。
 主人公の正体と過去を何らかの事情で知っている人間がいて、異世界での事件や事情に巻き込まれるケース。
 もともとは異世界側の人間だったが、なんらかの事情で呼び戻されたケース。
 ・・・・などなど

 私がレビューした中では――


――などが該当する。

 いずれにせよ現世と異世界が密接にリンクしているのがこのタイプ。
 もちろん、シリアス度は高い。

 3:因果系

 宿命系と似ているが微妙に違うのがこれ。
 物語の展開は異世界側の方が主で、現世の方は比率は少ない。だが主人公が現世での不幸や宿命やトラブルやハンデをそのまま引きずっているのが特徴で、主人公はけっして楽とは言えない異世界生活をおくるハメになるのが特徴だ。
 当然、ドラマは重く、ハードな内容が多い。

 レビュー作品では


 などが該当する。なお、〝貴方に贈る~〟は、ストーリーを読み解くと宿命系の要素も取り入れられているのが分かる。

 さて今回のレビュー対象作品の泉の聖女だが、形式としては同等たる因果系なのである。

 この転生系独自のストーリー構造を見た時に、私が一番目を引いたのがヒロインが、精神系・神経系の【心の病】を患っているという設定だった。
 単にうつ病です――、などと言うレベルではなく、この手の病が些細な事をきっかけとして重層的に悪化していく様を正確かつ冷静に描いているのである。それが故に彼女がいかに現世で生きづらいか、いかに生きることその物に苦心惨憺しているかを丹念に描いているのだ。

 ここに主人公が現世から逃避しなければならない強い理由が冒頭1話で克明に演出されているのがわかる。
 主人公の動機――これは非常に重要である。

 心の病は単に風邪をひく様に生まれるものではない。
 家庭環境、生い立ち、体質、人間関係、事件、事故、様々な要因を経て発生するのである。
 そして、主人公がそれらを冷静に自覚していることが第1話の流れでわかるのだ。

 そこに登場するのが、自称神のハクモウ

 彼いわく『魂を入れる肉体を間違えた。本来の肉体にもどしたい』と言う趣旨で現るのだ。
 とんだミスである。
 このワンシーンだけを切り取ればギャグになりかねないが、そこに更に作者の繊細な描写がはいることになる。
 主人公に選択が無いこと、そして主人公が向こう側にいかなければ困ると言う事がハッキリと明示されているのだ。
 そして主人公まりに事情説明をして納得を求めつつも、半ば強引に転生させてしまうのだ。

 が、ここまでがこの物語での『こちら側』である現世での因果の仕込みの部分である。

 そして物語は向こう側である異世界へとうつる。

 向こう側の世界ではある事件が起きている。
 つまり転生後直後からトラブルに巻き込まれるのだ。
 
 つまり主人公は異世界では世界の根幹をささえる『泉の聖女』と呼ばれる神に関与した存在であり、そのもともとの泉の聖女自体にトラブルが起き、世界の安定と存亡に関わる状態にある事が語られる。
 のほほん生活も、チートもない、いきなりにハードな宿命にほうりこまれるのだ。
 だが、異世界で生まれ直したことにより、主人公が背負っていた『心の病』と言う大きな枷が取り払われ、そこから重荷をおろすことが出来た主人公が実に生き生きと輝いて動き始めるのだ。
 
 現世での業、それが異世界で解消される。転生する意味とメリットがこれである。

 そして、その『現世での因果』があるからこそ、彼女が異世界側でで出会う人々の〝心〟の中に抱えた苦しみや痛みや重荷や業と言ったものを、主人公は丹念に拾い上げて、そして〝救い〟へと導こうと努力する様が描かれるのである。

 まさに――〝聖女〟である。

 その異世界の世界観も、神の存在から、神と人間とそのなかだちをする『泉の聖女』の存在。
 そして、その世界を支える『泉』の存在、
 さらには国家から政治構造まで丹念えがかれており、この作品での『向こう側』がれっきとしたハイファンタジーとして完成されているのが読み取れるのである。

 ここまでみればあとはレビューに入れる。

 つまりこの『泉の聖女』で私は、この作品が安易平易な転生物ではなく、れっきとしたハイレベルなハイファンタジーとして成立していることを伝えることにした。そして転生物としても良質の作品であることも。

 そして導いたキャッチコピーがこれである。

『ハイファンタジーの基本に忠実な良質の異世界転生』

 あとは本文にこのキャッチコピーである理由を書き込むだけである。
 一般的な転生物から一歩抜きん出た良質の作品である事、
 主人公マリにまつわる周辺事情の概略、
――を書き込み、
 さらに作者の心理描写の巧みさとそこから描かれるヒロインの魅力を書き込んだ。

 そして出来上がったレビュー文面がこれだ。


★異世界転生と聞いて私は偏見があった。つまりは『あぁ、またこれか』と言う感じに。だがそえは間違いだと悟った★現実世界で心身ともにボロボロの主人公。先行きの見えない毎日に擦り切れ絶望していた所に1人の神が降臨する。いわく『魂を入れ間違えた』と、ここだけ見ればたんなるコメディである★だがこの作品の本質はその先である。なろうでは異世界転生=チート的な雰囲気が漂う。つまり現実世界を否定して理想の世界へと逃避するための方便として使われているのが多い。この作品はそこからが根本的に違う★転生した先で彼女を待っていたのは主人公マリと同じように、辛い過去を引きずり他者との関わり合いに苦しむ者たちだった。転生先で得られた力も万能じゃない。手探り状態で与えられた使命を全うするためにマリは奮闘する★なにより心理描写が秀逸で万華鏡のように喜怒哀楽を表すヒロインの心理的な可愛らしさが光っている★ぜひご一読をすすめる


 以上だ。
 これが私のレビュー作成のさいの『見どころ』の絞込のプロセスである。

 どう?
 ^^;

 参考に成ったかしら。

 次回は――

 『 本日ハ所ニョリ磁気嵐、重油雨ノチ音波風 』

――を予定している。

 庵乃雲さーん、あとで行くね。

 さて、また後日お会いしよう。

 ばいなう

 ζ
 ■D:美風慶伍